早く着きすぎた事を後悔した
どこかで時間を潰せばよかったのだろうけど、この小さな町に時間を潰せるような気の利いたお店もなかった。
夕方5時前のこの町は老人の姿が目立った、母が以前この東区が北九州の中でもいちばん老人が多いとよ、と苦笑いしながら言っていた事を思い出した。

集合時間の6時を過ぎても誰ひとりとして来なかった、夕方の車が混み始める時間だ渋滞で時間通りに着かないのかもしれない、店員が飲み物のオーダーを取りに来た、わたしはもう少し待ってくれるように言った。店員が出て行くと外が騒がしくなった聞き覚えのある声たちだった、わたしは引き戸の方を見た。

「よう!久しぶり」

次々と懐かしい顔が笑顔で入ってくる

「みんな一緒に来たと?」

「そう、こいつんちに集まって1台で来た代行1台で済むやん」

「今日は朝まで飲むけね」

「あっ俺飲まんよ」

全員が彼を見た

「どうしたん?」

「十二指腸潰瘍やけ、酒もタバコも止められとると」

「お前が十二指腸潰瘍って顔か」


皆んなが笑う。
地元の方言に心が和む、帰ると極力地元の言葉を使うように意識してる、だけど最近は喋るのに少し考えてるからまずいなと思う。

オーダーした生ビールで乾杯が終わると

「優姫、ちょっとの間目をつぶっとって」と言われその通りにする、言われた通りに目を閉じて待つと「せーの、優姫おめでとう」の言葉に目を開ける。
視界に飛び込んで来たのは両手に溢れるほどの花束だった。

声にならない言葉が口に付く前に涙が溢れた...


桜の花びらの子... act 帰郷 2


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「おまえほんとに女になっちゃったね」

少ししんみりした場が笑いに包まれる
わたしも笑う

「ほんとやん花束貰って泣きよるもん」

また笑う

「ありがとう。うれしい」

わたしは皆んなの顔を見て言った

「うれしい言いよるぞ、俺なんか花束貰ってもなーんもうれしくない、やっぱ女は花束やね...そんで切ったと?」

皆んなが一斉にわたしを見る

一瞬意味が解らなかったが直ぐに理解した

「うん」

「付いとらんと?」

「うん」

「なーんも付いとらんと?」

うなずく

「見せて」

「馬鹿っ」

これが本音なんだろうな、わかるけど

「ひゃー痛かっちゃたね、でもあれあの...」

彼は言い淀む

「でもあれ、女のは付いとると?」

「うん」

「男とエッチはできると?」

「できるよ」

皆んなが顔を見合わす、ひとりの友人が右手をグーにすると皆んなが手を出しジャンケンが始まる

「じゃんけんぽんあいこで...」

「よっしゃあ俺いちばん!」

「あっ俺2番ね」


「アホか呆れるわ、友達やろ」

花束をもらった感動が一気に飛んだがこの際だから普段聞けない事を聞いてみようと思った。

「ねえちょっとマジで聞くけど、わたしのこと女として見れるん?エッチしたいとか思う?」

「見れる見れる全然オッケーやん」

皆んなが一同にうなずく

「前が男の子だったのに?」

「まぁ正直に言うと前が男っての知らんで実は男だったんよって言われて、やっぱりねと思うかウソやろ全然わからんかったっていう違いかな、やっぱ見た目やね。お前は昔から女ぽかったけんあんまり抵抗ないやん、落ち着くところに落ち着いたなって感じで男でいるよりそっちのが自然やしね」

彼が言うのはわたし達が気にするパス度だ、女性としてどれだけパス出来てるか、違和感なく女性として見られるかの度合いの事だ。顔だけじゃなく肌や髪の毛、仕草に言葉づかいとトータル的な事を指す。

パス度と言うとまず顔を気にする、しかしこればかりはもって生まれた素材も大きく関係してくるし女性でも美人かわいいそうでない人といるので仕方が無い。トータル的に女性に見えればいいんじゃないかと思うが、これがまた難しい。わたしは仕草や顔の表情の作り方は周りの女性達を観察して日夜研究をしてる。あからさまな女言葉などは普通の女性は同性同士では使わないってことも知ってる、男性にどう思われるよりもまず女性を欺く事の方が数倍難しい、女性には生理があるがわたしには当然そんなものはない。だけど女性社会にいる限りは振りをしなくてはならない、毎月なん日とあらかじめ決め、その前後に来た振りをする。生理用品の貸し借りは日常的に行われるし女性としての感情や行動全てを受け止め吸収する、時には無理だなめんどくさいなって事もあるけれど、それが女性社会で生きて行くって事だし埋没って事だと思ってるからやむを得ない。

ただストレスはすごく溜まる精神から身体にと変調をきたす、SRS後の自殺者が多いのも肯ける。
身体が女性になっていざ社会へと出ていくが自分を取り巻く環境と自分に押し潰される、自分を認めてあげなくてはいけないことはわかってるんだけどそれが出来ない 、わたしも未だにできてない。
なのでわたしのストレス解消法はSNSで自分をさらけ出す、twitterやTumblrに当ブログ、twitterのつぶやく内容なんかは酷すぎて目も当てられないけどこれで精神状態を保っていられるからわたしにとってはなくてはならないものとなってる。

SNSにマイノリティーとして出てる時点で埋没じゃないし、もし知り合いの目に止まったらと思うと気が気でないんだけど、そんなことにはならないだろうって思う自分もいるから楽観的におめでたい。自撮りはあげないようにしてるのもその為だけど過去に数回は上げてるので意味はないかもしれない。

SNSも女性としてやって完全埋没してる人は凄いなと思う、わたしにはとても出来そうにない。


「しかしその肌とか、どうしてそんな女みたいになるん?スネ毛とかもないと?」

「これね女性ホルモン摂るとこうなるんよ、スネ毛は永久脱毛したんよ」

「髪の毛もそんなサラサラになると?」

わたしの髪に手を触れながら聞く

「そう柔らかくなってくるね」

「おっぱいもそれ本物ね?」

彼らのわたしへの興味は尽きない、目の前に昔からの友達が今は女としているのだ、前に彼らに会った時はまだSRS前でホルモン歴も浅かった、あれから2年が経ち当時よりもっと女性化していた。

「触ってみる?」

「いいと?」

「いいよ、けどきつくせんといてね」

彼らが恐る恐る順番に胸を触る

「すげー柔らかいホンモノやん」

「ほんとすげー感動するね」

「あぁもう乳首はやめて」

「感じると?」

わたしはうなずく

「これもホルモンでこうなるん?」

「そう」

「俺もやろうかな、おっぱいもみ放題やん」

4人全員が考えてる

「ちょっとーそこ笑うとこでしょ!なに皆んなで妄想してるのよ」

「いやホルモンっちゃすごいんやねと思って男の胸がこうなるとは信じられんもんね」

「そう。凄いから不可逆性なの、遊びや興味でやっては駄目なの」

「不可逆性っちゃなんね?」

「それはね...」



少し春めいてきたかなと思ってたら、また冬に逆戻りして落ち着かないお天気ですね。例年だとそうでもないんですけど今年は花粉症の当たり年のようでマスクが手放せません。

今わたしは迷ってる事があるんです、一眼レフのカメラとレンズを買うか車のオーディオをいいやつにするか...トータルの価格はカメラの方が高いのですけど、わたし星景写真撮りたいんですよ!長野県に阿智村ってとこがあるんですけど、そこに行きたいんです、日本一星がきれいに見えるとこなんですって!行きたい行きたい~オーディオはヘッドユニットにアンプにスピーカー入れたいんです、全部自分でやろうと思ってるんです...はぁーどっちにしようかすごく迷ってしまう...どうしましょう


優姫



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